出会い
想苅田フューネラルホールで行われた“いのちのまつりトークライブ”は、私に深い感銘を与えただけでなく、“こんなにも感動的な人と人の出会いもあるのだと”衝撃を受けた。いま“いのちのまつり”と題して全国津々浦々で公演活動をしている絵本作家の草場一壽さんとフリーアナウンサーの副田ひろみさんが初めて出あったのは数年前の“命の集い”。会場の参加者から「どのような子供に育てたら良いか」との質問に、草場さんは「ありがとうとごめんなさいを言える人に育てば百点満点」と答えた。話を傍で聞いていた副田さんは、交通事故にあい23歳の若さで亡くなった息子が夢に出てきて、“ありがとう”“ごめんなさい”とだけ告げたことを思い出してその場に泣き崩れた。草場さんの一言で亡くなった息子への思いが一気に湧き上がってきたのである。
命の尊さ、家族の絆の大切さを子供たちやその親たちに伝える活動をしている草場さんと大切な息子を亡くした副田さんの出会いは、すごくドラマチックに思えた。話をしている副田さんを見ていると、自分の亡くなった子供に注ぐ気持ちを受け止めてくれる人に出会えた喜びが伝わってきた。この出会いを契機に、副田さんが草場さんと同じ願を持って活動を始めたのだと感じた。
講演会の後、つれあいと草場さんと副田さんの出あいの話になった。彼女は、「副田さんは草場さんと出会えて救われたんじゃないかな・・」と言った。そして、「葬儀の時にどんな担当者に出あえるかによって遺族の状況はかなり変わってくると思う」と付け加えた。
葬儀担当者の近くにいる女性スタッフは、担当者と遺族の関係を冷静に観察している。私が以前仕事をしていた時、言葉使いや身なりに無頓着だけど、遺族の話を聞いて一緒に泣く担当者がいた。田舎のおじちゃん・おばちゃん風の人からはすごく慕われた。女性スタッフは「今日は担当○○さんで良かったね。もう一緒に泣いていた」と陰で他のスタッフと話していた。知的で都会風の遺族がきたら、「言葉使いや身だしなみがきちんとしている○○さんで良かった」と。そして、うまい具合に担当者と遺族の関係がかみ合っていない時は、いつもより緊張しながら仕事をしていた。施行経験が豊かになっても、得て不得手がなかなか解決できない。私もグループの責任者として施行の仕事をしていた時に、いらいらしながら担当者を見ていたことがある。毎回、遺族にあいそうな担当者を選んで施行させることなど出来ない。
私が以前仕事をしていたのは、互助会系の会社で、社員を大切に育てることなど考えていなかった。社員間の生き残り競争で勝ち残った者だけが、恩恵を受けた。人を育てることが出来ない企業に未来はない。大切な人亡くした遺族のために、葬儀担当者の育成を意識的に図ることが大切なのである。
皆さんも読まれている「葬儀(SoGi)」の創刊3号(1991年)に「葬祭業における“教育”考える」という特集が組まれていた。“この仕事の8~9割は人間的部分が重要”として”求められるものは技能よりも人間教育“ということを色んな方々が力説していた。アメリカの葬儀教育事情の紹介記事では、質の高い精神的サービスで社会へ貢献するのが「葬儀社」であり、そのために葬儀担当者の「人格向上」を葬儀業界組織を上げて取り組んでいることが書かれてあった。今回の想苅田での講演会は、そういう意味ですこぶる面白い試みなのである。葬儀社がそれぞれの地域で社会的に果たす役割をはっきりさせて会社をあげて取り組みを行なう。そうすると自分たちがすすむ方向を少しずつ理解していくのである。
そして、新たな遺族と新しい出あいをしながら葬儀のお手伝いをしている施行担当者が、遺族とどのような“出あい”をしているのか、本人自身が点検出来るように援助する必要がある。幾つかの葬儀社さんが行っている施行後のアンケートをみると、最後の“7,ご意見、ご希望”のところで“担当の○○さんには良くしていただきまして”とか“親身なお心使いありがとうございました”と書かれていることがある。年間かなりの数のアンケートが返ってくるが、立派な祭壇を作っていただきましてとか、すばらしい棺や骨壺を用意して頂きまして“ありがとうございました”というようなことが書かれたものは無い。アンケートを見ていると、葬儀は遺族と担当者の“出あい”があり、血の通いあった関係が深められることによって行われるものだということが良く分かる。葬儀担当者にしてもこうしたアンケートが返ってくると励みになる。アンケートで感謝の言葉をいただいた場合だけでなく、そうでない場合いでも、葬儀が終われば今度の出あいはどうだったのか考える習慣を付けることが大事だ。そして、新たな出あいが遺族にとって素晴らし物になっていくようにするために、次のような視点から自己啓発をしてはどうだろうか。
1、人の死と向かい合って、自分の人生を見詰めなおしているか。2、人の命が亡くなる事に鈍感になり、気持ちの中にマンネリ化が生まれてないか。3、自分の仕事の評価は、売上だけになっていないか。4、故人の人柄や遺族の人柄に感動しているか。5、仕事を積み重ねていく中で、仕事への使命感や誇りが養われてきたか。こうしたことを会社の上司と社員の間で、施行担当者間で、そして、女性スタッフと担当者の間で討論し合いながら、高め合う関係を作り出すことが、出あいを素晴らしいものにしていくのではないだろうか。
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